茶室の小さな入り口「躙り口」【正座をしない茶道茶の実】
茶室、特に草庵風茶室に設けられた小さな出入口のことを「躙り口(にじりぐち)」と言います
一般的出入口と比べると非常に小さく、
高さ約60㎝~65㎝、幅も約60㎝~65㎝程度しかありません
そのため茶室に入る時には、腰をかがめて「躙り(にじ)入る」ような動作が必要です
「にじり」とは、
あの小さな入り口を通る際の動作を表しています
体を低くして、膝や腰を屈め少しずつ進む様子を指す言葉です
ちょっと大袈裟な例えですが、匍匐前進(ほふくぜんしん)のような、這うように身を縮めて進むような動きですね
この躙り口を、初めて体験した時
「どうやって入るの?」「どうやって出るの?」って思いました・・・
先輩方の動作を見ながら真似して四苦八苦…
着物の裾を乱さないように美しく流れるように…
少し稽古が必要です・・・
なぜ躙り口をこのように小さくしたのかは、いくつか重要な意味合いがあります
・身分の平等性
狭い躙り口を通る際には、武士であろうと商人であろうと、身分が高い人も低い人も、
皆平等に頭を下げ、身を屈める必要がある
これは、茶室という空間においては、身分や社会的地位に関わらず、
皆が平等な立場であることを象徴している
・非日常空間への入り口
小さな躙り口をくぐることで、日常の世界から隔絶された茶室という特別な空間へと
意識を切り替える役割がある
外界との境界となり、潜り抜けることで心が落ち着き、茶の湯の世界に入りやすくなると
考えられている
- ・室内を広く見せる効果
- 物理的に小さな入り口であるほど、中に入った時の開放感が大きく感じられる
- 狭い入口との対比によって、
- 茶室の空間が実際以上に広く感じられるという視覚的な効果もある
- ・謙虚な気持ち
- 頭を下げて入るという行為自体が、茶の湯の精神である謙虚さを表している
- 主人や他の客に対して敬意を払い、
- つつましい気持ちで茶会に臨む姿勢を示すとされている
躙り口は、千利休が確立したとされる侘び茶の精神を体現する
重要な要素の一つと言えるでしょう
単なる出入り口としてだけでなく、
茶の湯の精神や思想が込められた、奥深い意味を持つ意匠なのです。
例えば、茶室ではなく狭い洞窟に入るとして、身をかがめて進む様子が
「にじり」に近いイメージです
ただし、茶室の場合は、
単に狭いからそうするだけでなく、そこに精神的な意味合いが込められています
躙り口は基本的に茶室、特に小間の茶室に見られる独特の意匠です
しかし、躙り口までとはいかないが
意図的に出入り口を低くしたり、潜るような形状にしたりする事例は、稀に見られます
- ・隠れ家的な空間の演出
- 子供部屋や書斎など、秘密基地のような、こぢんまりとした落ち着ける空間を
- 作るために、あえて低い出入り口を設けることがある
- これは、茶室の「非日常空間への入り口」という考え方に近いかもしれない
- ・遊び心やデザイン
- 意匠的なアクセントとして、通常の出入り口とは異なる形状を取り入れることがある
- 低い出入り口は、空間に変化を与え、ユニークな印象を与える可能性がある
- ・既存の構造上の制約
- 古民家などのリノベーションで、既存の梁や壁の位置関係から、
- 結果的に低い出入り口になる場合がある
- ・特殊な用途の空間
- 例えば、床下収納や屋根裏部屋など、頻繁な出入りを想定していない収納スペースへの
- 出入り口が、構造上小さく、潜るような形状になることがある
- これは、茶室の躙り口とは目的が異なる
これらのケースは、茶室の躙り口が持つ
「身分の平等性」「非日常空間への意識の切り替え」「謙虚さの表れ」
といった深い意味合いとは異なります。
あくまで、機能性やデザイン、構造上の理由によるものがほとんどでしょう。
ただ、意味合いが異なっていますが、狭い入り口を取り入れた際には、
この深い意味を思い出して欲しいです…
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